京都に初冬の訪れを告げる、海老芋・壬生菜・九条葱

朝夕に肌寒さを感じる10月末から11月のはじめ。二十四節気の「霜降」から「立冬」へと移り変わる頃、北国や山間部では、草の葉に白い霜が見られるようになります。
人々が冬支度を始めるこの時期は、料理人にとっては素晴らしい冬野菜が出回りはじめ、腕が鳴る季節の始まりを意味します。
今回は、京都の伝統的な京野菜の中から、秋の深まりを一際強く感じることのできる、海老芋・壬生菜・九条葱の3つをご紹介してまいります。
寒さと霜で野菜は味を増す
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気温がぐっと下がり、京都の人々が底冷えを感じ始めると、冬野菜の旬が始まります。
盆地特有の寒暖差が大きい京都では、昔から「霜が降りるほど野菜は甘くなる」といわれています。寒さにさらされることで、凍結を防ぐために糖分を蓄え、甘みを増す野菜もあります。こうした変化が、冬野菜ならではの味わいにつながるのです。
中でも壬生菜や九条葱は、11月以降にそのおいしさをしっかりと実感できる野菜。壬生菜のシャキシャキとした食感の奥から、滲み出る甘い味わい、包丁を入れた九条葱の中から溢れるとろりと甘いねばりなどは、この時期しか感じられない季節の醍醐味。
季節の移ろいとともに変化する野菜の味わい。それを知り、最も美味しい時季を見極めて料理することも、京料理が大切に守り続けてきた心得なのです。
瑞々しい食感に甘さが加わる秋冬の壬生菜

美濃吉のお料理に度々登場する、細長く丸みのある葉が特徴の壬生菜。水菜から生まれた一変種とされ、江戸時代には京都の壬生地区で盛んに栽培されていました。秋口までは、水菜にも通じるすこしピリッとした辛味と香りを感じますが、晩秋からはそこに甘さが加わっていきます。
この壬生菜の調理にあたっては、シャキシャキとしたその食感を残すための火入れが肝心。さっと茹で、出汁に浸すことで味を加え、出会いもののきのこなどと合わせることで、香り・味わい・歯応えと三拍子揃ったおいしさを堪能することができます。
◼︎美濃吉の壬生菜のお料理 京壬生菜としめじの菊花浸し

季節のきのこと合わせた壬生菜のおひたしは、素材本来の味わいと食感を生かした自信作。
美濃吉の特製出汁の深いコクに、あっさりとした壬生菜が優しく寄り添います。
薬味ではなく、堂々たる主役となる九条葱

京野菜の代表格として広く認知され、今では全国で栽培されている九条葱。
その歴史も非常に深く、平安時代頃にはすでに京都・九条周辺で栽培されていました。その味わいの真髄はやはり、青々とした葉の甘さと香り。春から夏にかけては爽やかなシャキッとした食感を楽しませてくれる九条葱も、11月から厳冬期にかけては葉の内部にたっぷりとしたねばりを蓄えます。京都の料理人の間では、「あん(餡)」とも呼ばれるこの粘りが、独特の柔らかさと濃密な甘さを引き出してくれます。このように食感も風味も豊かな九条葱は薬味としてはもちろん、料理次第で堂々たる主役になれる魅力を持っています。
◼︎美濃吉の九条葱のお料理 九条葱のだし巻き・九条葱の辛子味噌和え

冬の九条葱を主役として楽しむお料理としては、辛子味噌和えをおすすめします。
柔らかな中にも食感を残し九条葱の味わいをピリッと引き締める辛子味噌。噛むほどに葱の甘味が口に広がる一品です。

刻んだ九条葱をたっぷりと入れただし巻きは、美濃吉でも人気の一品。
出汁の香り、卵の甘さの奥から、九条葱のシャキシャキとした食感と、香りが漂います。
京都人の大好物、ねっとりと優しい食感の海老芋

海老芋は、江戸時代の安永年間(1772~1781年)に長崎から京都へ持ち込まれた唐芋が起源と伝えられています。
その名前の通り、海老を思わせる長く曲がった姿と縞模様が特徴的な芋ですが、里芋の仲間です。そのほっこりとした食感と、甘味は毎年料理をしている私たち料理人でも「こんなに美味しい里芋はない」と感じてしまうほどです。特に晩秋から冬にかけて旬を迎え、緻密な肉質とねっとりとした食感、優しい甘みを楽しむことができます。この時期の海老芋は京都の市場や店舗の店頭に並ぶことが多く、京都の一般のご家庭でも、出汁で優しく炊いた海老芋が食べられています。
◼︎美濃吉の海老芋のお料理 海老芋のから揚げ

旬の盛りの海老芋を出汁で炊くことで軽く下味をつけ、そこに薄く粉をはたいてからりと揚げた唐揚げは、京都のお客さまからも「もうこのお料理の季節なのね」と言っていただけるほどの人気商品。料亭に端を発する美濃吉の出汁で炊いた一手間をかけた唐揚げの香ばしい味わいと、海老芋のほっこりと優しい食感をお楽しみください。



