京洛四季暦

「賀茂茄子」についてのご紹介

梅雨の訪れとともに、京都人が待ち望む伝統の丸い茄子

日に日に陽気が夏めいてくる季節に、京都の人々が今か今かと心待ちにするのが賀茂茄子です。一般的な茄子の登場よりも一足早く市場や店頭に並ぶ夏の便り。あの、深い紫色と、ころんと丸くふくよかな姿を目にすると、今年も「夏が来たな」と実感できるものです。

京都で愛される賀茂茄子は、その歴史も古く、貞享元年(1684)には文献に記載があります。当時は吉田神社で有名な左京区の吉田地区で栽培されており、やがて上賀茂・西賀茂地区で盛んに栽培されるようになったことから、賀茂茄子という名がついたとされています。
この地区は、雷や水の神様を祀る上賀茂神社があることからも分かる通り、清らかで豊富な水に恵まれた場所。賀茂茄子のみずみずしく、緻密に詰まった実を育てるのに、この水が欠かせないのです。

賀茂茄子は、夏の京料理の主役のひとつ

京都の料理人にとって、賀茂茄子は馴染み深く、味も素晴らしい愛すべき食材です。
美濃吉はもちろん、多くの京料理の老舗がこの賀茂茄子で、昔から数々のお料理を作ってきました。その中でも、賀茂茄子の魅力を十二分に堪能する代表料理といえば、やはり田楽でしょう。

茄子田楽は素朴な料理です。その素朴さの中で、素材の持ち味を見極めて魅力を引き出し、季節の情感を添える。これが賀茂茄子田楽の醍醐味です。

画像:賀茂茄子田楽イメージ

美濃吉の茄子田楽では、丸い賀茂茄子を横半分に切り、その丸い姿を活かしながら丁寧に火を入れていきます。この時、皮の一部を縞模様のように剥き、金串を刺すことで火の通りが均一になります。こうした下仕事を施して、じっくりと油を含ませながら焼き上げた賀茂茄子に、香り豊かな味噌を重ねる。最後に味噌を炙ることで、トロリとした茄子の食感と甘さに、香ばしさのアクセントが加わります。

茄子の中でも油との相性が良い賀茂茄子は、肉質が緻密なため油を吸いすぎず、旨味だけを乗せてくれるのが魅力。また火を通しても身が崩れず、それでいながらとろけるような食感と甘みが加わります。味噌の強い香りに負けない味わいと肉質を誇る賀茂茄子は、まさに田楽向け。この時期しか食べられない特別な季節の味わいです。

この時の味噌も、こだわりが詰まったもの。「手前味噌」ではありませんが、私たちが手ずから作った味噌だからこそ、賀茂茄子の繊細な味わいに合わせた味わいの調整ができるのだと自負しています。

大切なのは伝統を守りつつ、素材と向き合いつづけること

画像:賀茂茄子の釜焼きイメージ

賀茂茄子の田楽は、毎年このお料理の登場を楽しみにお待ちくださるお客様がいらっしゃる、長年愛され続ける伝統的なお料理です。
さらに、美濃吉では毎年さまざまなレシピを考えながら、いかにしてお客様に初夏の便りをお届けするかに心を砕いています。

例えばある年は、賀茂茄子を器に見立てて、身をくり抜きチーズやバターを合わせて、グラタン仕立てにした「賀茂茄子の釜焼き」のような京懐石に西洋のエッセンスを加えたお料理に。またある年は、賀茂茄子の皮を剥いて実を少し厚めのかつら剥きにして、灰汁を抜いた後に麺状に切り、山椒あんでいただく「賀茂茄子そうめん」に。他にも揚げて鼈甲あんかけ、煮込んでジュレがけなど、多彩なお料理が登場してまいりました。

いろいろなお料理に姿を変えることができるのも、甘味と旨味の詰まった賀茂茄子だけの素晴らしい特徴があってこそ。毎年「今年はどのようなお料理にしよう」と頭を悩ませながら料理人は、あの丸い、愛らしい茄子に出会える旬の到来を心待ちにしています。

6月から7月下旬というふた月も満たない賀茂茄子の旬。だからこそ、季節の到来に騒ぐ心、旬を味わえた嬉しさはひと塩になるのかもしれません。
今年も賀茂茄子の季節がやってきます。美濃吉がお届けする食の歳時記、賀茂茄子料理をぜひお楽しみください。

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